エアコン修理で新幹線を止めた話

業務用エアコン修理で新幹線を止めた話

場所は京都駅新幹線ホーム下の制御盤電気室です。何号電気室であったかは記憶にありません。
その日、その電気室の送風機制御盤に運転表示灯を取り付ける工事の依頼を受けて、私と電気工事業者の2名で実施する事になっていました。
現場に入る前に、機械部の係員より安全の指導を受け、作業前には必ず【確認良し】の指差呼称を大きな声で行う。異常があれば必ず備え付けの電話で、機械部へ連絡する事など、こと細かに注意を受けました。
勿論、「トイレの場所・喫煙場所への通路・現場への往復路・当該の現場以外をうろつくな」等工事以外の注意を、これでもかこれでもかと約1時間程度受けさせて頂きました。
また、現場へ持ち込む工具も必要最小限にするように言われ、これも点検台に載せて確認を受けました。当日使用する電気ドリルを取り出したところ、これが綺麗な箱に収めた真新しい工具で、係員も思わず【新品】か?と聞くほど最新式の物でした。

その後コイツが事件を起こします。

同行の業者も『昨日使い始めたところです』と自信たっぷりに元気良く返事をしていました。そうするうちに10時の休憩時間?になり現場作業は10時30分からとなりました。
さて、運命の時間はもうすぐです。10時30分から現場へ移動し、表示灯を取り付ける送風機制御盤を確認し、その取付位置に図面通りの罫書きを入れました。
ここで係員が、用事を思い出したらしく一寸離れるので後を頼むと言って出ていってしまいました。
残った二人は、関係する開閉器を手順通り1つ切るごとに、【回路遮断確認良し】と指差呼称をしながら作業を進めて行きました。
業者は電気ドリルにガイド穴用のキリを装着し天井に向け、二度三度空転させ如何にも調子がいいなと、言わんばかりに私の顔を見てうなずきました。
私は【安全良し、確認良し】と言い作業開始と告げ、業者はドリルキリを制御盤の表面に当てました。 その時小さな光が『ぴかっ』としたような、しなかったような。するとそれまで勢い良く運転していたその他の送風機が、突然心臓麻痺でも起こしたように『ウーン』と右肩下がりの音と共に停止したのです。それからは、何がなんだか判らない状態になり、こちらから係員に電話をするまでに、機械部の人たちが飛んで来ました。
制御盤電気室で【漏電事故発生】と大きな声で叫んでいます。こちらは何処の機械室の【事故?】くらいに思い、彼らの動きを呆然と見ていると、『10時?分より10数秒本線停止』と言っています。よく聞いていると、どうやら新幹線への送電が止まったらしいのです。
数人がやがやと話をしていたが、そのうち我々の方を向いて一緒に電気監視室へ来なさいと命令されました。
監視室に入ると正面に大きな漏電電流計があり、その針は10数㎜Aの数値をさして止まっています。聞くところによると、その数値は我々が起こした【漏電事故】の内容だとのことです。

新幹線またびっくり。勿論、工事は中止。そのあと『こんこんと説教』を受け、会社に報告すると怒られ、それから後は関係各所へとにかくお詫びのし通しです。機械部はじめ電気課、果ては工務、保線課まで行ったり来り、さんざんな一日となりました。幸いな事に、新幹線は完全停止していなかったので、運行遅れは起算されなかったそうです。事故後、現場でメガーテストをすると絶縁0Ωおまけに、ドリルを振ると水滴が落ちる始末。原因は、真新しい電気ドリルは確かに前日が初日でしたが、その業者の別の職人が雨天の中で作業をし、そのままビニール袋に入れ箱に収めていた事が判りました。

その後、新幹線のセキュリティは格段に強化され、私のような【ばかな失敗】をするやつが、その後も続出したのか手持ち工具の検査はより厳しくされ、安全指導はさらに徹底しています。

・・教訓・・  何でも見た目や感覚で判断してはいけない。

工具の確認はデジタル数字で行うこと。

 

コメント

error: