【問題】
下記仕様で、制作された円筒胴圧力容器を、R 410A 用の高圧受液器として使用したい。これについて、次の間に、計算式を示して答えよ。
円筒胴圧力容器の仕様; 使用鋼板 円筒胴の外径 円筒胴板の厚さ 鏡板に使用する鋼板の厚さ 円筒胴板と鏡板の腐れしろ 円筒胴板の溶接継手の効率 | SM400B Do = 620 mm ta1 = 14 mm ta2 = 8 mm α = 1 mm η = 0.7 |
ただし、R 410A の各基準凝縮温度における設計圧力は、次表の圧力を使用するものとする。
凝縮温度(℃) | 43 | 50 | 55 | 60 | 65 |
設計圧力(MPa) | 2.50 | 2.96 | 3.33 | 3.73 | 4.17 |
(1) この受液器が使用できる最高の凝縮温度 (℃) を求めよ。また、その凝縮温度を選択した理由を記せ。
(2) この受液器を凝縮温度50℃で用いる場合に、円筒胴に取り付ける鏡板として厚さ 8 mm の鋼板を用いることができるか否かを、鏡板の必要厚さ ta (mm) を計算して判断せよ。鏡板の形状は半球形とし、円筒胴と鏡板は、外径を同一の寸法とする。また、この鏡板には溶接継手はないものとする。
【解答】
(1) この受液器が使用できる最高の凝縮温度 (℃) を求める
- 円筒胴・鏡板の外径:Do = 620 mm
- 円筒胴鋼板厚さ:ta1 = 14 mm
- 鏡板鋼板厚さ:ta2 = 8 mm
- 腐れしろ:α = 1 mm
- 溶接継手効率:η = 0.7
公式
\(P_{a}=\large{\frac{2σ_{a}η(t_{a1}-α)}{D_{i}+1.2(t_{a1}-α)}}\)
\(t_{a}=\large{\frac{PRW}{2σ_{a}η-0.2P}}+α\)
\(P_{a}\):限界圧力
\(σ_{a}\):許容引張応力
\(D_{i}\):内径
\(t_{a}\):半球型鏡板必要厚さ
\(P\):設計圧力
\(R\):鏡板内面半径
\(W\):形状係数
ここで許容引張応力 \(σ_{a}\)は、使用鋼板が SM400B なので、\(σ_{a}=100\)(N/㎜2)
内径 \(D_{i}\) は、\(D_{i}=D_{o}-2t_{a1}=620-2×14=592\)㎜
数値を代入して\(P_{a}\)を求める
\(P_{a}=\large{\frac{2σ_{a}η(t_{a1}-α)}{D_{i}+1.2(t_{a1}-α)}}\)=\(\large{\frac{2×100×0.7(14-1)}{592+1.2(14-1)}}\)=2.995391705≒2.99
限界圧力 Pa が 2.99 Mpa なので、問題の表より設計圧力 2.96 Mpa まで使用可能である。
このときの使用できる最高の凝縮温度は 50℃ である。
(2) この受液器を凝縮温度50℃で用いる場合に、円筒胴に取り付ける鏡板として厚さ 8 mm の鋼板を用いることができるか否か
半球型鏡板の必要厚さ \(t_{a}\) は上記公式 \(t_{a}=\large{\frac{PRW}{2σ_{a}η-0.2P}}+α\)により求める
ここで、
凝縮温度50℃の設計圧力 P=2.96 MPa
半球型鏡板の形状係数 W=1
鏡板は溶接継手がないので溶接継手の効率 η=1
ここで許容引張応力 \(σ_{a}\)は、使用鋼板が SM400B なので、\(σ_{a}=100\)(N/㎜2)
また 鏡板の内面半径 R は
\(R=\frac{D_{o}-2×t_{a2}}{2}=\frac{620-2×8}{2}=302\)㎜
公式 \(t_{a}=\large{\frac{PRW}{2σ_{a}η-0.2P}}+α\) に数値を代入する
\(t_{a}=\large{\frac{PRW}{2σ_{a}η-0.2P}}+α\)=\(\large{\frac{2.96×302×1}{2×100×1-0.2×2.96}}+1\)=5.482869293≒5.5㎜
よって8㎜の鋼板は使用可能