環境省主催で2023年11月に開催されたフロン排出抑制法の説明会における資料の概要です。本編は第一種特定製品の管理者(機器ユーザー等)を対象とした資料です
- 1.フロンを取り巻く動向
- 2. 日本におけるフロン対策
- 3.管理者の責務
- 4. 改正フロン排出抑制法に係る摘発事案
- 参考 管理者向けチラシ
- 参考 : フロン排出抑制法パンフレット(2023年3月版)
- 参考資料
- コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業
- お問い合わせ先
1.フロンを取り巻く動向
1.1 フロン類とは
●フロン類は、燃えにくい、化学的に安定、人体に毒性がない、液化しやすいといった利点を持つ化学物質であり、エアコンや冷凍冷蔵機器の冷媒や断熱材の発泡剤などに広く活用されてきた。
● フロン類には、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の3種類がある。
1.2 フロン類の環境影響
●特定フロン(CFC、HCFC)は、有害な紫外線を吸収し地球上の生物を守っているオゾン層を破壊する。特定フロンの削減に向けた国際的な取組の継続により、南極のオゾンホールについては、1990年代後半以降、長期的な拡大傾向はみられなくなり、また、2066年頃には1980年レベルに戻ると予測されているものの、オゾン層のより早期の回復や特定フロンによる地球温暖化防止の観点から、引き続き排出抑制が必要。
●代替フロン(HFC)は、オゾン層を破壊しないものの、二酸化炭素の数十倍から10,000倍以上の大きな温室効果を持つ。地球温暖化対策上も、代替フロンを含むフロン類の排出抑制が喫緊の課題。
※出所)世界気象機関(WMO)/国連環境計画(UNEP)オゾン層破壊の科学アセスメント:2022
1.3 国際的なフロン対策 モントリオール議定書
● 国際的な取組として、モントリオール議定書により特定フロンを抑制、オゾン層を保護してきました。
● 2016年には、地球温暖化の防止に貢献するキガリ改正が採択されました。
1.4 モントリオール議定書キガリ改正のポイントと国の取組み
● 2016年10月、ルワンダのキガリにて議定書が改正され、日本も2018年12月にキガリ改正を受諾し、2019年1月1日から代替フロンの製造、輸入規制を開始。今後、国全体の代替フロン生産量、消費量それぞれの限度が、段階的に切り下げられていくこととなる。
● 特に厳しくなる2029年以降の削減義務(2,145万CO2ーt)を達成すべく、グリーン冷媒及びそれを活用した製品の開発・導入を計画的に推進する。
● グリーン冷媒技術を世界に先駆けて開発し、その成果を他国に波及させていくことにより、世界全体のフロン対策に貢献していく予定。
1.5 フロン類対策の方向性
◼ オゾン層保護のため、オゾン層を破壊する「特定フロン」からオゾン層を破壊しない「代替フロン」に転換を実施。
◼ 今後、高い温室効果を持つ「代替フロン」から、温室効果の小さい「グリーン冷媒」への転換が必要。
◼ 現に利用している機器からの排出の抑制も重要。
※フロン分野の排出推計においては、現状の対策を継続した場合の推計を示す。
1.6 代替フロンの排出量
◼ HFCsの排出量は、我が国の温室効果ガス排出量全体の4.6%を占める(2021年度確報値)。
近年増加傾向にあり、2021年の排出量は、2013年比70.6%増加した。
◼ 特に、エアコン等の冷媒用途における排出量が急増しており、全体の9割以上を占めている。この多くはオゾン層破壊物質であるHCFCsからの代替に伴うものである。
<出典> 環境省報道発表資料 「2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について」
1.7 地球温暖化対策計画(R3.10閣議決定)における代替フロンの対策・施策
<2030年度目標値>(温室効果ガス排出量)
前地球温暖化対策計画 (平成28年5月閣議決定) | 現行地球温暖化対策計画 (令和3年10月閣議決定) | |
ハイドロフルオロカーボン (HFCs) | 21.6百万トンCO2 (2013年度比-32.7%) | 14.5百万トンCO2 (2013年度比-55%) |
<地球温暖化対策計画における対策>
フロン類使用製品のノンフロン・低GWP化の推進 • 新たな製品追加や目標値の見直しなど、指定製品制度の積極的な運用 • ユーザーや消費者にも分かりやすいフロン類使用製品等への表示の充実 • 技術開発・技術導入支援、自然冷媒機器普及促進支援等 業務用冷凍空調機器の使用時におけるフロン類の漏えい防止 • フロン類算定漏えい量報告・公表制度の効果的な運用 • フロン排出抑制法の適切な実施・運用(機器の管理者による点検の実施) • 機器点検へのIoT・デジタル技術の積極的な導入 • 冷媒漏えいの早期発見に向けた機器の維持・管理の技術水準の向上等 冷凍空調機器からのフロン類の回収・適正処理 • フロン排出抑制法、自動車リサイクル法、家電リサイクル法の確実な施行 • フロン排出抑制法における都道府県と連携した回収率の向上(機器廃棄時の確実な回収依頼、充填回収業者による確実な回収の実施等) 産業界の自主的な取組の推進 • 産業界によるHFCs等の排出抑制に係る自主行動計画に基づく取組の促進 |
2. 日本におけるフロン対策
2.1 フロン排出抑制法の概要
●「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(略称:フロン排出抑制法)」では、業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)を対象とし、フロン類の製造から使用、廃棄に至るライフサイクル全体の包括的な対策を講じることとしており、関係者それぞれに対策を求めるものとなっている。
2.2 フロン類対策に関する法制度のあゆみ
◼ オゾン層保護法:モントリオール議定書に基づく特定フロン(CFC、HCFC)及び代替フロン(HFC)の生産量・消費量の削減のため、フロンの製造及び輸入の規制措置を講ずる。
代替フロン(HFC)は2016年の議定書の改正(キガリ改正)を受け、2019年から規制対象に追加。
◼ フロン排出抑制法:フロン類の排出抑制を目的として、業務用冷凍空調機器の使用時の管理適正化や廃棄時のフロン回収義務など、フロン類のライフサイクル全般にわたる排出抑制対策を規定している。
◼ 他に、家電リサイクル法、自動車リサイクル法でも規定されている。
2.3 機器廃棄時のフロン回収率
◼ 2001年のフロン回収・破壊法制定に伴い、機器廃棄時のフロン回収が義務化された。
それ以降、機器廃棄時のフロン類回収率は、一定の向上は見られるものの、直近でも4割程度に止まっている。
◼ 地球温暖化対策計画(2021年10月閣議決定)の目標実現に向け、対策強化が不可欠。
フロン類の廃棄時回収率の推移
2.4 機器廃棄時のフロン回収率が低迷している要因・課題
◼ フロン未回収の要因を分析し課題を抽出するため、2018年に、経産省・環境省が共同で、調査・ヒアリングを実施。
◼ この結果、 フロン未回収分(6割強)のうち半分強(3割強)は、機器廃棄時にフロン回収作業が行われなかったことに起因。
◼ 特に、建物解体に伴う機器廃棄においてフロン回収作業が行われなかった場合が多い。
◼ また、廃棄物・リサイクル業者が廃棄された機器を引き取る際に、フロン回収作業がされているかどうかを確認する仕組みがなく、フロンが放出されてしまっている場合あり。
2.5 フロン排出抑制法の改正について
● 機器廃棄時のフロン回収率向上のため、関係者が相互に確認・連携し、ユーザーによる機器の廃棄時のフロン類の回収が確実に行われる仕組みへ。(2020年4月1日施行)
2.6 参考 : 都道府県による立入検査等の実施状況
◼ 都道府県による立入検査及び任意の実地調査の実施件数は年々増加傾向。任意の実地調査は、東京都による解体現場確認(フロンGメン)を中心に4,164件実施(令和3年度)
都道府県による立入検査等の実施状況
3.管理者の責務
3.1 管理者の責務
機器の管理者は、点検・記録、整備・修理、漏えい量の算定・報告、フロン類の充塡・回収の委託、廃棄時のフロン類の引渡し等をすることが必要です
3.2 参考「管理者」の定義
◼ 業務用の空調機器及び冷凍冷蔵機器の所有者等は、第一種特定製品の管理者や廃棄等実施者として、フロン排出抑制法の対象となる。
◼ HFOやCO2など、フロン類以外を冷媒として使用している機器については、フロン排出抑制法の対象外。
<管理者とは>
⚫ 原則として、当該製品の所有者が管理者となる。
⚫ ただし、例外として、契約書等の書面において、保守・修繕の責務を所有者以外が負うこととされているリース契約等の場合は、その者が管理者となる。
保守点検、メンテナンス等の管理業務を委託するとされている場合は、当該委託を行うことが保守・修繕の責務の遂行であるため、委託先のメンテナンス業者でなく、委託元である所有者等が管理者に当たる。
所有者と使用者のどちらが管理者に当たるか不明確な場合は、まず、現在の契約を所有者と使用者の間で相互に確認し、管理者がどちらに該当するのかを明確にすることが必要。
当該製品の所有者が管理者でない場合(例)
3.3 参考「第一種特定製品」とは
◼ 「第一種特定製品」とは、業務用の空調機器(エアコンディショナー)及び冷凍冷蔵機器であって、冷媒としてフロン類が使われているものを指す(第二種特定製品を除く。)。フロン類を回収した後も第一種特定製品として取り扱う必要がある。
◼ 「業務用」とは、製造メーカーが業務用として製造・輸入している機器を指す。
事業活動で使用していても、製造メーカーが家庭用として販売している場合があるため、事前に製造メーカーにお問い合わせいただきたい。
3.4 参考第一種特定製品の例①
◼ 第一種特定製品の設置が想定される場所別の機器種類の例は下表のとおり。
◼ 下表以外にも、冷媒としてフロン類が使われている業務用の冷凍空調機器であれば第一種特定製品に該当。
出典:第一種特定製品の管理者に関する運用の手引き(第3版)
3.5 参考第一種特定製品の例②
◼ 第一種特定製品の設置が想定される場所別の機器種類の例は下表のとおり。
◼ 下表以外にも、冷媒としてフロン類が使われている業務用の冷凍空調機器であれば第一種特定製品に該当。
3.2 機器を使用しているときの管理者の責務
● 管理者の機器管理に係る「判断の基準」において、以下の遵守が求められています
2019年改正点2022年改正点
3.3 簡易点検
● 全ての第一種特定製品(業務用の冷凍空調機器)について、3か月に一回以上の簡易点検を義務づけています。(実施者の具体的な限定なし。)
● ただし、フロン類を回収済みの機器については、簡易点検を行う必要はありません。
3.4 簡易点検の留意事項等
◼ 設置場所の周囲の状況や第一種特定製品の管理者の技術的能力により検査が困難な事項については、可能な範囲内で検査を行うこと。
(例:室外機が防護柵のない屋根の上にある場合、長い脚立を使わないと点検できない場合等)
◼ 検査により漏えいや故障等を確認した場合には、可能な限り速やかに、専門点検を行うこと。
(十分な知見を有する者が直接法又は間接法により実施 → 定期点検を参照)
◼ 簡易点検について記録しなければならない内容は、基礎情報(設置場所等)以外では、「実施日」、「実施の有無」のみ
(常時監視システムを用いた代替措置の場合は「利用期間」のみ )。
◼ 環境省・経済産業省作成による手引きや関係団体が作成した解説動画を参照されたい。
•「業務用冷凍空調機器ユーザーによる簡易点検の手引き」
https://www.jarac.or.jp/images/freon/ktenken.pdf
•業務用冷凍空調機器ユーザーによる『簡易点検の手引き』(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=prC4Ubl7Wvk
◼ 点検頻度「3か月に1回以上」の考え方
フロン排出抑制法QA集(第6版) No.48
Q 点検(簡易点検3月に1回、定期点検1年に1回等)において、第1回目やそれ以降の実施はいつに設定すればよいのか。
A 簡易点検なら3か月、定期点検であれば1年もしくは3年以内に、最初の点検を実施してください。また、次の点検については、前点検日の属する月の翌月1日から起算して、それぞれ定められた期間以内に行ってください。
3.5 常時監視システムによる簡易点検
◼ 機器の点検でのIoT技術の活用による管理者の負担軽減に向けた要望や、業界団体で常時監視システムの基準が策定され一定以上の漏えい検知精度の確保が可能となったことを受け、2022年8月22日、「第一種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項」(告示)を改正。
◼ 漏えい又は故障等を常時監視するシステム(常時監視システム)のうち、基準に適合するものを用いて、漏えい又は故障等を早期に発見するために必要な措置が講じられている場合は、検査(簡易点検)に代えることができることとなった。
常時監視システムによる簡易点検のイメージ
3.6 常時監視システムに関する基準
◼ 「第一種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項」 (告示)に掲げられる常時監視システムに関する基準は下表のとおり。
第一種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項(告示)
要素 | 基準 |
計測 | イ 管理第一種特定製品の種類に応じ、冷媒系統ごとの圧力、温度その他の漏えいを検知するために必要な状態値を1日に 1回以上計測すること。 |
診断 | ロ イの状態値の異常又は変化に基づき、漏えい又は漏えいの疑いがあるか否かを1日に1回以上診断すること。 |
記録 | ハ イの状態値又はロの診断の結果を1日に1回以上記録し、1年以上保存すること。 |
通知 | ニ ロの診断の結果、漏えい又は漏えいの疑いを検知した場合において、当該診断に係る管理第一種特定製品の管理者に対し、 当該管理者以外の者が通知を容易に解除することができない方法により直ちに当該診断の結果を通知すること。また、当該通知の 履歴を1年以上保存すること。 |
検知性能 | ホ 漏えいの検知性能について、管理第一種特定製品の製品群ごとに日本冷凍空調工業会標準規格(JRA)若しくは日本産業規格 (JIS)で規定され、又は管理第一種特定製品ごとに当該管理第一種特定製品のカタログに記載された温度その他の条件で試験が行 われ、適正な充塡量の30%の冷媒が漏えいするまでに漏えいの判定が可能であることが確認されていること。 |
3.7 定期点検
●圧縮機に用いられる電動機の定格出力が一定規模以上の第一種特定製品については定期的に、十分な知見を有する者が自ら又は立会うことによる直接法、間接法又はこれらの組み合わせによる検査、異常音有無の検査、目視検査を義務付け。
3.8 定期点検、記録の詳細等
◼ 定期点検の内容
• 管理する第一種特定製品からの異常音の有無についての検査
• 管理する第一種特定製品の外観の損傷、摩耗、腐食及びさびその他の劣化、油漏れ並びに熱交換器への霜の付着の有無についての目視による検査
• 直接法、間接法又はこれらを組み合わせた方法による検査を行うこと
◼ 十分な知見を有する者
フロン類の性状・取扱いや、機器の構造・運転方法について十分な知見を有する者であって、一定の資格又は経験を有する者
(例:「冷媒フロン類取扱技術者」など。詳細は、「第一種特定製品の管理者に関する運用の手引き(第3版)」、「フロン排出抑制法QA集(令和2年3月第6版)」を参照)
◼ 記録・保存
• 点検整備記録簿の保存形式は、紙形式、電子形式のいずれでも可能であり、「判断の基準」に定められた記録すべき事項が含まれていれば様式は自由である。
• 第一種特定製品を他者に売却(譲渡)する場合、点検整備記録簿又は写しを当該第一種特定製品と合わせて売却(譲渡)の相手方に引き渡すこと。
参考 : 点検記録簿の例
◼ 一般社団法人日本冷凍空調設備工業連合会が作成・公表している点検整備記録簿の記入例
https://www.jarac.or.jp/freon/05_logbook(エクセルファイルをダウンロード可能)
3.9 整備時におけるフロン類の充塡・回収の委託義務
◼ フロン類の充塡・回収は、都道府県に登録された第一種フロン類充塡回収業者に委託しなければならない。(自らが登録された第一種フロン類充塡回収業者である場合は除く)
◼ その際、第一種フロン類充塡回収業者から管理者に対し、充塡証明書・回収証明書が交付される。
3.10 フロン類算定漏えい量報告・公表制度
●業務用冷凍空調機器の管理者によるフロン類の漏えい量の把握を通じた自主的な管理の適正化を促すため、一定以上(年間1000t-CO2以上)の漏えいが生じた場合、管理する機器からのフロン類の漏えい量を国に対して報告する必要がある(翌年度の7月末日締切)。
●国に報告された情報は、整理した上で公表する。
3.11 漏えい量の算定方法
◼ 第一種特定製品から漏えいしたフロン類の量は直接には把握ができないことから、算定漏えい量は充塡証明書及び回収証明書から算出することになる。
◼ 機器設置時の充塡量及び機器廃棄時の回収量は、算定の対象外。
◼ 充塡・回収証明書などの入力から報告対象となった場合の報告書作成までを支援するツールとして、報告書作成支援ツールを利用可能。詳細は下記URLを参照のこと。
https://www.env.go.jp/earth/furon/operator/isshu_santei-2.html
3.12 フロン排出抑制法に基づく 「情報処理センター」
◼ 管理者は、充塡証明書・回収証明書の情報から、「点検整備記録簿」に充塡量・回収量を記録する。
また、充塡証明書・回収証明書に基づき、機器からの漏えい量を算定する。
◼ 情報処理センターを介することにより、紙の証明書が交付不要となる。また、電子的な登録・通知により、管理者は、充塡量・回収量等を電子的に管理・集計可能であり、点検整備記録簿への記録・保存や、算定漏えい量報告のための集計が容易に行うことができる。
参考情報処理センターの利用
◼ 情報処理センターとして国に指定された一般財団法人日本冷媒・環境保全機構(JRECO)が「冷媒管理システム(RaMS)」を提供している。第一種フロン類充塡回収業者及び管理者がシステムに登録し(無料)、第一種フロン類充塡回収業者が充塡量・回収量等を登録(有料)すれば、充塡量・回収量等が管理者に通知される。
◼ 多くの事業所、支社がある場合、事業所や支社の情報を連携したり、管理者(本社)で情報を集約することができる(無料)
http://marchan-na.com/rams/
3.13 機器廃棄時のフロン類引渡し義務、行程管理制度
◼ 第一種特定製品の廃棄又はリサイクル目的の譲渡を行おうとする管理者は、フロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡す(回収してもらう)か、フロン類の引渡しを設備業者、建物解体業者等に委託する必要がある。なお、第一種特定製品にフロン類が残存しておらず、フロン類を引き渡すことができない場合は第一種フロン類充塡回収業者による確認を受ける必要がある。
◼ フロン類の管理のため、フロン類の引渡し方法に応じ、行程管理票(回収依頼書、委託確認書、再委託承諾書、引取証明書、確認証明書)の受取、交付、保存を行う必要がある。(行程管理制度)
機器廃棄時等のフロン類の回収
参考 : 行程管理票の例
◼ 書面については、施行規則に定められた事項が含まれていれば、様式は問わない。なお、法令で定める事項を満たした書面の様式は、例えば一般財団法人日本冷媒・環境保全機構が発行するものがあるので参考にされたい。
❶フロン類の回収と機器の処分を、別の事業者に依頼する場合
1)フロン類の回収を「回収依頼書」で第一種フロン類充塡回収業者に依頼すること。
※機器を捨てる際にフロン類を回収しないと、罰則の対象となる。
※充塡回収業者への直接依頼ではなく、設備業者、解体業者等の引渡受託者を介して依頼する場合、 「委託確認書」を渡すこと。
2)充塡回収業者から、フロン類を回収したことを示す、「引取証明書(原本)」を受け取り、3年間保存すること。
※保存していなかった場合、罰則の対象となる。
3)廃棄物・リサイクル業者に機器を引き渡す際には、引取証明書の写しを作成し、機器と一緒に渡すこと。
※機器を金属資源等として有償・無償で引き渡す場合も含む。
※引取証明書の写しを機器と一緒に渡していない場合、罰則の対象となる。
❷フロン類の回収と機器の処分を同じ事業者に依頼する場合
廃棄物・リサイクル業者が充塡回収業の登録を受けている場合、フロン類の回収とあわせて機器の引取りも依頼することが可能。
1)フロン類の回収と機器の処分を、「回収依頼書」により
充塡回収業登録を受けた廃棄物・リサイクル業者に依頼すること。
※金属資源等として有償・無償で引き渡す場合も含む。
※機器を捨てる際にフロン類を回収しないと、罰則の対象となる。
充塡回収業者から、フロン類を回収したことを示す、
「引取証明書(原本)」を受け取り、3年間保存すること。
※保存していなかった場合、罰則の対象となる。
❸建物の解体と合わせて機器を廃棄する場合
解体業者や設備業者等に機器の処分とあわせてフロン類の引渡しを委託することが可能。
なお、建物を解体する場合は、解体元請業者から、解体する建物における第一種特定製品の有無の事前確認及び事前説明がある。
1)(建物解体の場合)解体元請業者から、解体する建物における機器の有無について事前説明がされる。
その事前確認書面を3年間保存すること。
2)機器の処分とフロン類の回収を解体元請業者や設備業者等経由で
依頼する場合、当該業者に「委託確認書」を渡す必要がある。
※「委託確認書」を渡していない場合、罰則の対象となる。
3)機器の処分は解体元請業者等に依頼するが、フロン類の回収を解体元請業者等経由としない場合でも、解体元請業者等に「引取証明書の写し」を渡す必要がある。
※次に示す確認証明書等でも可。
④廃棄しようとする機器にフロン類が充塡されていない場合等
フロン類が充塡されていないことが明らかである例外的な場合(例:相当の年月で風化が進んだ不法投棄機器、災害により大破した機器等)、充塡回収業者が「フロン類が充塡されていない」ことを確認し、確認証明書の写しを機器と共に渡すことで、廃棄を行うことも可能。
<廃棄しようとする機器にフロン類が充塡されていないことが確実である等、前述の
❶~❸の方法に拠ることが適切でない場合>
1) 充塡回収業者に依頼して 「フロン類が充塡されていない」ことを確認すること。
2)充塡回収業者から、フロン類が充塡されていなかったことを示す、
「確認証明書(原本)」を受け取り、3年間保存すること。
3)廃棄物・リサイクル業者に機器を引き渡す際には、「確認証明書の写し」を作成し、機器と一緒に渡すこと。
※機器を金属資源等として有償・無償で引き渡す場合も含む。
※ 安易に充塡されていないと判断して確認の依頼をするのではなく、回収を依頼すること
(回収作業の結果、回収量が0の場合でも引取証明書が交付される)。
その他、引取証明書の写しの交付ができないやむを得ない事情があり、都道府県知事が認める場合には廃棄することができる。(例:災害廃棄物として処理する場合等)
4. 改正フロン排出抑制法に係る摘発事案
4.1 摘発事案①
◼ 八王子市解体工事現場において、エアコンに冷媒として充塡されているフロンを大気中に放出させたなどとして、警視庁は建物解体業者の代表取締役と社員、自動車販売会社の社員の計3名と、法人としての両社をフロン排出抑制法違反の疑いで2021年11月9日に東京地方検察庁立川支部へ書類送致。
◼ 改正フロン排出抑制法施行後の事件化は全国初。
違反内容
(1)自動車販売会社
フロン回収を委託する際に法令で定められた委託確認書を交付しなかった疑い
法第43条第2項違反(委託確認書不交付)
罰則:第105条第2号の規定により30万円以下の罰金
(2)建物解体業者
エアコンに充塡されているフロンガスを回収しないまま重機で取り外し、フロンガスを大気中に放出させた疑い法第86条違反(みだり放出)
罰則:第103条第13号の規定により1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
警視庁と都の連携
警視庁の通報により都が立入検査を実施、リークディテクターによる現認、現場の大気を採取しフロンのみだり放出を確認、事件化
4.1 摘発事案➁
◼ 東京都町田市の金属買取業者A社が、業務用エアコン内のフロン類が回収されたことを確認せずに機器を引き取り、重機で破壊した結果、フロン類を大気中に放出させたなどとして、2022年11月、警視庁はA社の代表取締役とその社員等計4名をフロン排出抑制法違反の疑いで逮捕。同法違反容疑の逮捕者は全国初。
◼ さらに、当該業務用エアコンを引き渡した者など計4名及び被疑法人2社を書類送致。
参考 管理者向けチラシ
https://www.env.go.jp/content/900440903.pdf
参考 : フロン排出抑制法パンフレット(2023年3月版)
⚫ フロン類とは何か
⚫ フロン排出抑制法の全体像
⚫ フロン排出抑制法の対象となる業務用冷凍空調機器の例
⚫ フロン類製造業者、指定製品製造業者向け対策の充実
⚫ 業務用冷凍空調機器の管理者による冷媒管理の徹底
⚫ フロン類の充填、回収、再生、破壊
⚫ 関係者の役割
⚫ フロン排出抑制法の経緯
⚫ フロン排出抑制法に基づく義務及び罰則一覧
⚫ 照会・通報・相談先
https://www.env.go.jp/earth/furon/files/int_01-16_202303.pdf
参考資料
◼ 関連ページ
• フロン排出抑制法ポータルサイトhttps://www.env.go.jp/earth/furon/
• 環境省HP > フロン排出抑制法https://www.env.go.jp/earth/earth/24.html
◼ 第一種特定製品の管理者に関する運用の手引き(第3版)
https://www.env.go.jp/earth/furon/files/r03_tebiki_kanri_rev3.pdf
◼ フロン排出抑制法QA集(令和2年3月第6版)
https://www.env.go.jp/earth/furon/faq/index.html
◼ パンフレット、チラシ、説明会資料
https://www.env.go.jp/earth/furon/gaiyo/sanko.html
◼ 関連法令(三段対照表もあり)
https://www.env.go.jp/earth/furon/link/hoki.html
◼ YouTube環境省チャンネル – フロン対策(再生リスト)
フロン排出抑制法の解説動画などを掲載しています。
https://www.youtube.com/playlist?list=PL9Gx55DGS7x54tsPiMnUaIQZn48JNqz0r
コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業
【令和6年度要求額7,000百万円(7,000百万円) 】
コールドチェーンにおける脱炭素型自然冷媒機器の導入を支援するとともに、既設機からのフロン排出抑制方法を検証することで、脱フロン・脱炭素型冷凍冷蔵機器への迅速かつ効率的な移行実現を図ります。
1. 事業目的
① モントリオール議定書に即した代替フロンの着実な削減の実行のため、代替フロンから自然冷媒への転換を支援
② 省エネ、再エネ活用に取り組む事業者への積極的な支援により、コールドチェーンの脱フロン化・脱炭素化を推進
③ 一定の需要を生み出すことにより自然冷媒機器の低価格化を促進
④ フロン排出抑制法の取組強化と相まった温室効果ガスの大幅削減に向けた検証
2. 事業内容
我が国において、温室効果の高い代替フロンの排出量は増加傾向を示しており、2050年カーボンニュートラルの目標達成のために迅速な排出量削減が必要。代替フロンの迅速かつ効率的な排出削減のためには、規制的措置に加えて、脱フロン・脱炭
素型の自然冷媒機器への転換の促進、また、過渡期においては、既設機からのフロン排出抑制に取り組む必要があり、それらを推進するために以下の事業を行う。
(1)脱炭素型自然冷媒機器の導入支援事業(間接補助事業)
国民生活に欠かせないコールドチェーンを支える冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、食品
小売店舗を営む中小企業等の脱炭素型自然冷媒機器の導入費用に対して補助を行う。
(2)フロン類対策による省CO2効果等検証事業(委託事業)
冷媒対策を通じた温室効果ガス削減に係る市場動向や技術動向の調査等を実施し、最
新技術等によるエネルギー起源のCO2排出削減効果・代替フロン排出削減効果を分
析・検証し、効果を最大化する今後の普及措置を検討する。
3. 事業スキーム
■事業形態
(1)間接補助事業 補助率:原則1/3 冷凍冷蔵ショーケース
※大企業に関しては、自然冷媒機器への転換に先導的に取り組んでいることを条件とし、かつ、再エネ活用や高水準の省エネ化の取組を評価する。
※自然冷媒機器導入費用に対する補助であり、再エネ設備等の導入費用は補助対象外
(2)委託事業
■補助・委託対象
民間事業者・団体、地方公共団体等
■実施期間
令和5年度~令和9年度
4.事業イメージ
(1)脱炭素型自然冷媒機器の導入支援事業
お問い合わせ先
◼ 第一種特定製品の管理・廃棄等、充塡回収業に関して
⇒都道府県のフロン排出抑制法担当の窓口
https://www.env.go.jp/earth/furon/contact/index.html
◼ フロン類使用見通し、指定製品制度、再生業・破壊業その他法制度全体に関して
環境省地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室0570-055-520(平日9:30~18:15)
経済産業省製造産業局 化学物質管理課 オゾン層保護等推進室03-3501-1511(内線:3711)
※ フロン類使用見通しや指定製品制度に関しては経済産業省まで。
◼ フロン類算定漏えい量報告・公表制度に関して
窓口業務を外部に委託しております。
【令和5年度】フロン類算定漏えい量報告・公表制度ヘルプデスク
エム・アール・アイ リサーチアソシエイツ(株)
TEL: 03-6858-3134(平日9:30~17:30)