経済産業省・環境省共催で令和元年11月から令和2年3月にかけて全国で実施されている令和2年4月1日施行の改正フロン排出抑制法の説明会における資料の概要です。本編は建物解体業者及び廃棄物・リサイクル業者を対象とした資料です
1.フロンを取り巻く動向
1.1 フロン類とは
●フロン類とは、フッ素と炭素などの化合物で、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の総称です。
オゾン層を破壊するCFC 、HCFCを「特定フロン」、オゾン層を破壊しないHFCを「代替フロン」といいます。
● 不燃性、化学的に安定、人体に毒性が小さいなどの特徴を有するものが多く、エアコンや冷蔵庫などの冷媒をはじめ、断熱材等の発泡剤など、様々な用途に活用されてきました。
1.2 フロン類の環境影響
●特定フロンは、有害な紫外線を吸収し地球上の生物を守っているオゾン層を破壊します。
●世界のオゾン全量は1980年代を中心に減少し、南極のオゾンホールの面積は、1980年代から1990年代半ばにかけて急激に拡大しました。
●その後、国際的な特定フロンの削減が進んだ結果、1990年代後半以降、南極のオゾンホールの長期的な拡大傾向はみられなくなりました。一方で、1980年代の規模に戻るのは2060年代頃と予測されており、引き続き対策が必要です。
● 代替フロンは、オゾン層を破壊しないものの、二酸化炭素の数十倍から10,000倍以上の大きな温室効果をもちます。
● 日本の温室効果ガス排出量全体は、再エネの導入拡大等により、2014年度以降は減少しています。一方で、特定フロンからの転換が進んだことに伴い、代替フロンの排出量は大きく増加し続けている状況です。
● 地球温暖化対策上も、代替フロンを含むフロン類の排出抑制が喫緊の課題となっています。
1.3 国際的なフロン対策 モントリオール議定書
● 国際的な取組として、モントリオール議定書により特定フロンを抑制、オゾン層を保護してきました。
● 2016年には、地球温暖化の防止に貢献するキガリ改正が採択。2019年1月から規制開始となっており、日本国内でもグリーン冷媒の開発・導入等の対策がとられはじめています。
1.4 フロン類対策の方向性
● これまで、オゾン層を破壊する「特定フロン」からオゾン層を破壊しない「代替フロン」への転換が進められてきました。
● 今後、高い温室効果を持つ「代替フロン」から、温室効果の小さい「グリーン冷媒」への転換が必要です。
●また、現在利用している機器からの排出の抑制も重要となります。
2. 日本におけるフロン対策
2.1 ⽇本におけるフロン対策の全体像
●オゾン層保護法︓モントリオール議定書に基づくフロン類の⽣産量・消費量の削減のため、フロン類の製造及び輸⼊の規制措置を講ずる法律
● フロン排出抑制法︓フロン類の排出抑制を⽬的として、業務⽤冷凍空調機器からの廃棄時のフロン類の引渡義務など、フロン類のライフサイクル全般にわたる排出抑制対策 を規定する法律
●他、家電リサイクル法、⾃動⾞リサイクル法でも規定されています。
2.2 フロン類対策に関する法制度のあゆみ
● オゾン層保護法は、モントリオール議定書の改正に対応して昨年改正し、代替フロンが規制対象に追加されています。
● フロン排出抑制法は、制定時(旧フロン回収・破壊法)から廃棄時の対策に取り組み、2013年改正により、ライフサイクル全体を通した排出抑制を⽬的とした制度に強化されています。
2.3 2019年改正の背景 機器廃棄時のフロン回収率低迷
● 2001年のフロン回収・破壊法制定に伴い、機器廃棄時のフロン回収が制度化されました。しかし、機器廃棄時のフロン回収率は10年以上3割程度に低迷し、直近でも4割弱に止まっている状況です。
● 地球温暖化対策計画(2016年5月閣議決定)の目標の実現に向け、対策強化が不可欠であると考えられます。
※我が国は、回収量を正確に把握し、廃棄時回収率を算出公表する世界的に見て高度なシステムを有しています。
2.4 2019年改正の背景 機器廃棄時のフロン回収率低迷の要因
● フロン未回収の要因を分析し課題を抽出するため、2018年に経産省・環境省が共同で、調査・ヒアリングを実施しました。
● この結果、 フロン未回収分(6割強)のうち半分強(3割強)は、機器廃棄時にフロン回収作業が行われなかったことに起因しており、特に建物解体に伴う機器廃棄においてフロン回収作業が行われなかった場合が多いことがわかりました。
● また、廃棄物・リサイクル業者が廃棄された機器を引き取る際に、フロン回収作業がされているかどうかを確認する仕組みがなく、フロンが放出されてしまっている場合があることもわかりました。
2.5 2019年フロン排出抑制法改正等の概要
○ 機器廃棄時のフロン回収率向上のため、関係者が相互に確認・連携し、ユーザーによる機器の廃棄時のフロン類の回収が確実に行われる仕組みへ。
○ 2020年4月1日より施行されます
3.フロン排出抑制法の全体像
3.1 フロン排出抑制法
● フロン排出抑制法は、ライフサイクル全体を通した排出抑制を目的としています。
● 2019年改正により、特定解体工事元請業者、第一種特定製品引取等実施者にも新たな責務が課せられました。
3.2 制度の対象= 「特定解体工事元請業者」、「第一種特定製品引取等実施者」とは
3.3 制度の対象= 「第一種特定製品」とは
●「第一種特定製品」とは、業務用の空調機器(エアコンディショナー)及び冷凍冷蔵機器であって、冷媒としてフロン類が使われているものをいいます。(第二種特定製品を除く。)フロン類を回収後も第一種特定製品として取り扱う必要があります。
●「業務用」とは、製造メーカーが業務用として製造・輸入している機器です。使用目的が業務用であっても、製造メーカーが家庭用として販売している場合がありますので、事前に製造メーカーにお問い合わせ下さい。
3.4 機器廃棄時等のフロン類の回収(行程管理制度)
○ 機器廃棄時のフロン類の流れは、「行程管理制度」により書面で管理されています。
○ 機器の廃棄等を行う管理者(第一種特定製品廃棄等実施者)は、機器を廃棄する際、フロン類を充塡回収業者に引き渡すか、設備業者や解体業者等にフロン類の引渡しを委託するよう定められており、行程管理票(回収依頼書、委託確認書、再委託承諾書)の交付とその写しの保存(3年)、充塡回収業者から交付される引取証明書の保存(3年)を引渡し方法に応じて行う必要があります。
※ 行程管理票の交付・保存は電子化することができます。RaMS(冷媒管理システム)も参照ください。
4.改正法を踏まえた建設・解体業者の責務
4.1 建設・解体業者の責務
❶建設・解体業者は、解体する建物において業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器の有無を事前確認し、その結果を書面で発注者に説明してください。その書面の写しを3年間保存
❷フロン類の回収を充塡回収業者に依頼してください(工事の発注者から充塡回収業者へのフロン類引渡しを受託した(委託確認書の交付を受けた)場合)
❸フロン類が回収されていることを確認し、廃棄物・リサイクル業者に機器を引渡してください。
※引取証明書等によりフロン回収済みであると確認できない場合、その機器の引き取りは拒否されます!
4.2 「管理者」とは
●業務用の空調機器及び冷凍冷蔵機器の所有者等は、第一種特定製品の管理者や廃棄等実施者として、フロン排出抑制法の対象となります。
●HFOやCO2など、フロン類以外を冷媒として使用している機器については、フロン排出抑制法の対象外となります。
-「管理者」とは- ●原則として、当該製品の所有者が管理者となります。 |
4.3 建物を解体する際の流れ
4.3.1 事前確認
● 実際には、解体する建物に第一種特定製品(業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器)があるかどうかで流れが変わってきます。
● まず、建物を解体する際には第一種特定製品が設置されていないことが明らかである場合を除き、必ず第一種特定製品があるかを事前に確認します※。
⇒確認した結果は、書面で発注者に説明する必要があります。
書面は工事発注者(原本)と工事元請業者(写し)がそれぞれ3年間保存する必要があります。
4.3.2 事前確認後の流れ
①第一種特定製品があり、フロン類が回収済みの場合
●工事元請業者が、フロン類を回収済みの第一種特定製品の処分を委託する場合、工事発注者からフロン類が回収済みであることを示す「引取証明書」の写しをもらってください。
●廃棄物・リサイクル業者に引取証明書の写しを添えて機器を引き渡します。
※引取証明書の写しがないと、その機器のフロン類が回収済みであることを
証明できないため、引取りを拒否されます!
②第一種特定製品があり、フロン類が未回収の場合
● 発注者から、フロン類が未回収の機器の処分を依頼された場合、以下の2種類の方法があります。
➢ 工事の発注者から委託確認書をもらい、フロン類の回収を充塡回収業者に依頼してください。
➢ 充塡回収業者から引取証明書の写しをもらい、3年間保存します。廃棄物・リサイクル業者に廃棄する機器を
引き渡すときには、引取証明書の写しを渡します。
➢ 工事の発注者に対し、発注者自ら(もしくは第三者に委託して)フロン類の回収を充塡回収業者に依頼するよ
う伝えてください。
➢ その後は①と同様、工事発注者から引取証明書の写しをもらい、廃棄物・リサイクル業者に機器とともに渡し
ます。
③機器がなかった場合
– 解体する建物に第一種特定製品がなかった場合でも、「機器がなかった」という結果を事前確認書面に記入し、
発注者に対して書面で説明する必要があります。
– また、説明した事前解体書面の写しは3年間保存する必要があります。
4.4 罰則規定(建物解体業者)
●責務を果たさずフロン類をみだりに放出した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
●また、特定解体工事元請業者は、都道府県の指導監督(報告徴収・立入検査等)の対象となりました。
5. 改正法を踏まえた廃棄物・リサイクル業者の責務
5.1 廃棄物・リサイクル業者の責務
●今年度の法改正により、廃棄物・リサイクル業者は、フロン類の回収等が確認できない第一種特定製品の引取り等は禁止されました。
※違反して引取り等を行った場合は直罰の対象となります。
●具体的には、主に以下の場合で引取が可能です。
❶ 引取証明書の写しを受け取った場合
❷ 自らフロン類を回収する場合
❸ 充塡回収業者へのフロン類の引渡しを委託された場合
❹ フロン類が充塡されていないことを示す確認証明書の写しを受け取った場合
●フロン排出抑制法の対象となる第一種特定製品引取等実施者とは、廃棄等された第一種特定製品の引取り等を
行おうとする者を指します。
※ 「引取り等」には、金属資源等としての無償・有償での引取りを含みますが、中古品としての引取りは含みま
せん。
●第一種特定製品について、商習慣上の下取りを行う場合も、第一種特定製品引取等実施者となります。
※ 「商習慣上の下取り」とは、新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で
引取り、収集運搬する下取り行為を指します。
● 第一種特定製品引取等実施者は、引取証明書の写しの交付等を受けてからでないと機器を引取ることができま
せん。
● このため、第一種特定製品を廃棄しようとするもの(廃棄等実施者)は、廃棄物・リサイクル業者に機器を引
き渡す際には、引取証明書の写し等を交付する必要があります。
● 交付の手段は、自ら直接書面を交付すること、他人を通じて交付すること、ファクシミリ又は電子メール等に
より交付すること等いずれの方式でも可能ですが、最終的に機器が廃棄物・リサイクル業者のもとに届いた際に、
上記書類が交付されている必要があります。
5.2 第一種特定製品の引取りが可能ケース
❸
充塡回収業者へのフロン類の
引渡しを委託された場合
❶❷以外の場合であっても、管理者(廃棄等実施
者)から、フロン類の充塡回収業者への引渡しを
依頼され、「委託確認書」の交付を受けた場合は
引取り可能です。
この場合、フロン類の回収を委託した充塡回収業
者から「引取証明書」の写しの交付を受けます。
❹
フロン類が充塡されていない
ことを示す確認証明書の写し
を受け取った場合
充塡回収業者が交付する、フロン類がその機器に
充塡されていないことを確認する「確認証明書」
の写しが機器に添えられており、フロン類が充塡
されていないことを確認できる場合は引取り可能
です。
5.3 罰則規定(廃棄物・リサイクル業者)
●フロン類の回収が確認できない機器を引き取った場合、50万円以下の罰金が科せられます。
●また、第一種特定製品を取扱う廃棄物・リサイクル業者は、都道府県の指導監督(報告徴収・立入検査等)
の対象となります。
5.4 廃棄時等のフロン類・帳票類の流れ
6. 改正のポイント
6.1 2019年フロン排出抑制法改正等の概要
2019年フロン排出抑制法改正等の概要
● 機器廃棄時のフロン回収率向上のため、関係者が相互に確認・連携し、ユーザーによる機器の廃棄時のフロン類の回収が確実に行われる仕組みへ。
● 2020年4月1日より施行されます
※ 参考資料(環境省 啓発用リーフレット)(令和2年4月施行の改正フロン排出抑制法の改正ポイントがご確認いただけます。)