1.フロン排出抑制法における管理者の定義
●管理者とは、原則として、当該製品(機器)の所有権を有する者(所有者)である。会社が所有していれば、法人が管理者となる。
●契約書等の書面において、保守・修繕の責務を所有者以外が負うこととされている所有者以外が管理者となる場合は、その者が管理者となる。
管理者の解釈の例
1.冷凍空調機器がリースの場合・・・使用者が管理者
2.冷凍空調機器がレンタルの場合・・・レンタル会社が管理者
3.冷凍空調機器が割賦販売の場合・・・使用者が管理者
4.テナントビルの場合で冷凍空調機器がビルに据え付けてある・・・ビルの所有者が管理者
5.テナントビルの場合で冷凍空調機器の所有権がテナントにある場合・・・テナントが管理者
6.冷凍空調機器を共同所有している場合・・・共同所有者間で、話し合いで管理者を1人に決める
7.所有者から委託を受けて機器管理を請け負っているビル管理会社等・・・委託元が管理者となる。ビル管理会社は管理者にならない。
管理者の判断の基準
●主務大臣は、第一種特定製品の管理者(主に所有者)が当該製品の使用等に際し、取り組むべき措置に関して、判断基準を定める。
●都道府県知事は、管理者に対し、当該製品の使用等に関して必要な指導及び助言、勧告及び命令等できる。
●管理者は、冷凍空調機器を使用するにあたって、フロン類の漏えいを防止するため、以下の事項について守らなければならない。
(1)冷凍空調機器を設置する時
◆適切な設置、適正な使用環境を維持し、確保する
(2)冷凍空調機器を使用している時
◆機器の簡易(日常)点検・定期点検を実施する
(3)フロンの漏えいを発見した時
◆速やかに漏えい箇所を特定し、修理する
◆機器の修理をせずに充塡することは原則禁止
(4)点検や修理をした後
◆点検・修理・充塡・回収に関する履歴を記録し、その記録を保存する
2.機器の適切な設置
ア.機器の設置場所の周辺に振動源がないこと
◆ 近くに他の機器や大型トラックが通る道路な
ど、 大きな振動が起こりやすい場所はできるだ
け避けるようにする。
イ.点検・修理を行うための必要な空間の確保
◆ 設置後、点検や修理を行うために必要な
ス ペースを確保する。
3.適正な使用環境の維持
機器を使用している時は、日頃の清掃など周辺環境の整備を行ってください。
ア.排水板、凝縮器・熱交換器の定期的な清掃
イ.排水の定期的な除去
ウ.機器の上部に他の機器を設置する場合は十分注意すること(機器の破損や性能の劣化防止)
エ. 点検、修理の空間の確保
4.機器使用中の漏えい点検
簡易点検
日常的に簡易点検を行ってください。(全ての冷凍空調機器)
管理者自らが実施します。
定期点検
定期的に点検を行ってください。(一定規模以上の冷凍空調機器)
専門業者に依頼してください。十分な知見を有する者による点検 十分な知見を有する者による点検
4.1 機器の簡易点検
●管理者自ら簡易点検を行うことで、漏えい徴候を見つけ、専門業者に連絡し、漏えいを最小限にすることを目的にしている。(全ての第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)が対象となる。)
下記の機器種類ごとのチェックシートを参考にする。
3か月に1回以上の頻度で行う。
簡易点検チェックシートの例
4.2 定期点検の点検頻度
機 種 | 圧縮機電動機定格出力 | 点検頻度 |
エアコンディショナー | 7.5kW以上50kW未満 | 3年に1回以上 |
50kW以上 | 1年に1回以上 | |
冷凍・冷蔵機器 | 7.5kW以上 | 1年に1回以上 |
※ 圧縮機の定格出力とは、基本的には圧縮機を駆動する電動機の定格出力をいうが、ガスヒートポンプエアコン等、圧縮機の駆動に内燃機関(エンジン)を用いる機器については、当該内燃機関の定格出力をいう。輸送用冷凍冷蔵ユニットのうち、車両その他の輸送機関を駆動する内燃機関により輸送用冷凍冷蔵ユニットの圧縮機を駆動するものについては、当該内燃機関の定格出力のうち当該圧縮機を駆動するために用いられる出力をいう。
※ 複数の圧縮機がある機器の場合、冷媒系統が同じ(複数の圧縮機が同じ冷媒配管により接続されている場合)であれば合算して判断する。例えば、ひとつの冷媒系統に2台の圧縮機が使われている場合は、2台合計の定格出力で判断する。
4.3 定期点検の実施者
下記の資格を持つ知見を有する者
①冷媒フロン類取扱技術者
②一定の資格を有し、かつ、点検に必要となる知識等の習得を伴う講習を受講した者
一定の資格:
- 冷凍空調技士
- 高圧ガス製造保安責任者(冷凍機械)(冷凍機械以外であって第一種特定製品の製造又は管理に関する業務に5年以上従事した者
- 冷凍空気調和機器施工技能士
- 高圧ガス保安協会冷凍空調施設工事事業所の保安管理者
- 自動車電気装置整備士(自動車に搭載された第一種特定製品に限る)
③十分な実務経験を有し、かつ、点検に必要とされる知識等の習得を伴う講習を受講した者(十分な実務経験:日常的に冷凍空調機器の整備や点検に3年以上携わってきた技術者であって、これまで高圧ガス保安法やフロン回収・破壊法を遵守し、違反がない技術者)
4.4 定期点検の方法
直 接 法
発泡液法
ピンポイントの漏えい検知に適している。漏えい可能性のある箇所に発泡液を塗布し、吹き出すフロンを検知。
漏えい検知機を用いた方式
電子式の検知機を用いて、配管等から漏れるフロンを検知する方法。検知機の精度によるが、他の2方法に比べて微量の漏えいでも検知が可能。
蛍光剤法
配管内に蛍光剤を注入し、漏えい箇所から漏れ出た蛍光剤を紫外線等のランプを用いて漏えい箇所を特定。
※蛍光剤の成分によっては機器に不具合を生ずるおそれがあることから、機器メーカーの了承を得た上で実施することが必要
間 接 法
下記のようなチェックシートなどを用いて、稼働中の機器の運転値が日常値とずれていないか確認し、漏れの有無を診断。
4.5 定期点検の手順
5.点検・修理後行うこと
点検・修理・再充塡の履歴の記録・保存等
◆ 適切な管理を行うため、機器の点検・修理・充塡・回収の履歴を記録・保存する。 (点検・整備記録簿の作成)
◆ 機器の整備の際に、整備業者等の求めに応じて当該履歴を開示する必要がある。
◆ 記録(点検・整備記録簿)は、機器ごとに行い、当該機器を廃棄するまで保存しなければなりません。
◆ 機器を他社に売却・譲渡する場合は、点検・整備記録簿又はその写しを売却・譲渡相手に引き渡す必要があります。
5.1 点検・整備記録簿作成
必要な記録事項
①機器の管理者の氏名又は名称
②機器の設置場所及び機器を特定できる情報
③使用しているフロン類の種類及び量
④点検の実施年月日、点検を実施した者の氏名又は名称、点検の内容及びその結果
⑤機器の修理の実施年月日、修理を実施した者の氏名又は名称、修理の内容及びその結果
⑥フロン類の漏えい又は故障が等が確認された場合における速やかな修理が困難である理由及び修理の予定時期
⑦機器の整備時にフロン類を充塡した年月日、充塡回収業者の氏名又は名称、充塡したフロン類の種類及び量
⑧機器の整備時にフロン類を回収した年月日、充塡回収業者の氏名又は名称、回収したフロン類の種類及び量
様式例
6.算定漏えい量報告
●業務用冷凍空調機器から1,000t-CO2以上の漏えいを生じさせた場合、管理する機器からのフロン類の漏えい量を国に対して報告する必要がある。
●国に報告された情報は、整理した上で公表される。
詳しくは「フロン類算定漏えい量報告マニュアル」を参照してください。
漏えい量算定方法
フロン類算定漏えい量の算定・報告に用いる冷媒種類別GWP 一覧