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フロン漏洩の点検と検知方法

漏えい点検の方法

目視,聴覚による外観点検

注目する点 注目する箇所 状況
油の漏れやシミ

●主に液冷媒が流れる配管のろう付け
箇所,フレア継手等
●凝縮器
●ドレンパンや保温カバー
●局所的に油(冷凍機油)の漏れの痕
跡又は油が漏れている場合
凍結,着霜,結露

●キャピラリチューブ周り
●液冷媒が流れている冷媒配管
●通常冷えるべき所でない場所で凍結
や結露がある場合
腐食

●主に液冷媒が流れる配管のろう付け
箇所,フレア継手等
●局所的に油の漏れの痕跡又は油漏れ
がある場合
●腐食により配管,熱交換器コイル等
劣化による穴あきがある場合
損傷

●機器全体を点検
●配管の曲がりや折れ
●傷,ヒビ,クラック,へこみ等
の損
溶栓の変形
●溶栓の溶融金属が変形して
いないか
を点検
●●溶栓変形の有無
冷媒液面の低下

●運転中の冷媒液面
●停止中の液面計の液面
●規定ラインより低い
●冷媒液面の異常低下
防熱材の破損

●防熱,断熱材の点検 ●雨水等の浸入がないか点検
●配管が変形していないか点検

機器を使用した漏えい検知方法

電子式漏えいガス検知法
半導体センサ,加熱半導体センサ,赤外線センサ等の高性能センサを使用して,冷媒ガスを直接検知することで,
冷凍空調機器の漏えいの有無及び場所を特定する。
特徴
高性能センサを使用して漏えいした冷媒を直接検知するため,冷媒漏えい箇所をポイントで特定が可能。フレア継ぎ
手,ろう付け部等にセンサ部,若しくは吸入ノズルを近づけ,その箇所で冷媒の漏えいがあれば,ブザーあるいはラ
ンプの点灯,点滅で警告する。
発泡液法や蛍光剤法と異なり,薬剤等を使用しないため検知箇所が汚れない。メンテナンス等で使用される漏えい検
知としては,検知感度に優れている。
注意事項
1) 誤検知を防止するため,高湿度下や高有埃下での検知
の際には,周囲環境に特に留意する。吸引式の場合,結
露している低圧側配管を検査する際は,水分を吸引しセ
ンサや吸引ポンプを壊すことがあるので,特に注意する
必要がある。
2) リークディテクタの種類によって検知対象冷媒に得手
不得手があるため,対象冷媒を確認した上で検知作業に
使用するリークディテクタを選定する。
3) 赤外線吸収式のリークディテクタは,可燃ガスや水蒸
気等に反応しにくい特徴があるが,一般的に断熱材の発
泡ガスにも反応するため,使用環境に注意が必要である
4) 多量の冷媒漏えいが考えられる場合には,誤検知や感
度低下が起きる可能性があるため,発泡液法など,別の直接法による検知が望ましい。
5) センサは消耗品であるため,定期的なリファレンスリークによる感度チェックとセンサ交換を実施する。
6) 空調機や冷凍機に十分な冷媒が入っていることを確認する。冷媒量があまりにも少ないときは,的確にガス漏れ
箇所が検知できない。機器が停止状態で,340kPa(3.4bar)以上のゲージ圧が必要である。また,15℃以下の環境
では圧力が下がり,ガス検知が不可能なことがある。
7) 機器運転中でも冷凍サイクル内の残ガスが少ない場合は,高圧側は検知できても低圧側は圧力が極端に低くなる
ため検知できない。
8) センサが汚れていないか十分に確かめた上,検知作業を行う。センサ吸い込み部に汚れがあった場合は乾いた清
浄な布やエアーで掃除して,乾燥させてから使用する。センサの誤作動を防ぐため,洗浄剤等を使っての洗浄は絶
対に行わないこと。
9) まず目視で配管や空調システムのガス漏れの痕跡をチェックする。次にガス検知器のセンサをガス漏れの疑わし
い場所に近づけ,注意深く検知していく。
10) ガス漏れ箇所を的確に検知するため,道筋を立てて検知作業を行うこと。漏れ箇所を確認後,\検知した場所から
残りの道筋を辿って検知作業を行う。
11) 全てのアクセスポートとキャップのシールを点検する。
12) センサを検知箇所から5mm 以上離さず,1 秒間に約2.5~5cm の速度でセンサを移動させる。センサを対象に近
づけ,ゆっくり検知作業を行うと,検知率が上昇する。
13) 漏れが疑われる箇所にエアーを吹きかけて,周辺の気体を飛ばす。必要に応じて同じ箇所の検知作業を繰り返す
こと。漏れが大きい場合はエアーを吹きかけることで正確な箇所を特定することができる。
14) 大型の冷凍空調機の場合には,機器の底部を最初に測定して漏えいがあるエリアを絞ってから細部の検知を実施
する。
15) 検知精度を上げるため,空気の流れは最小限にとどめる。
16) 明らかな漏えい箇所や,多量の漏えいが考えられる場合には,エアーを吹き込み,その箇所を一旦きれいにして
から漏えい箇所を確認する。
17) 蒸発器の点検をする際は,凝縮ドレン管の中のガスを点検するとよい。

電子式漏えい検知器の種類と特徴

  半導体方式 熱線型半導体方式 電気化学検知方式 赤外線吸収方式

● 長寿命
● 長期安定性に優れ
ている
● 被毒性ガスに対す
る耐久性に優れてい
● 長寿命
● 長期安定性に優れている
● 半導体方式に比べ初期安定
時間が短い
● 半導体方式に比べ反応時間
が速い
● 低濃度における出力の変化
が大きい
● 高感度センサ
● 電気化学的に塩素,フッ
素,水素等を検出する
● 干渉ガスの影響を受けに
くい
● ガスに対する選択性を持
っている
● 熱線型半導体方式に比べ
反応時間が速い
● 熱線半導体方式に比べ復
帰時間が速い
● 長寿命
● 干渉ガスの影響を受けに
くい
● 高濃度ガスに対する耐久
性に優れている
● 熱線型半導体方式に比べ
反応時間が速い
● 熱線半導体方式に比べ復
帰時間が速い

● 温度や湿度の影響を受けやすい
● 干渉ガスの影響を受ける
● シリコンガス,塩化物のガスによりセンサが劣化
する
● センサ金額が高額
● 可燃性ガスとの共用検知
が難しい
● センサ寿命が短い
● センサ金額が高額
● 可燃性ガスとの共用検知
が難しい
●その他、コロナ放電式があるが,R32,R141b,R412A 等の微燃性フロンの漏えい検知には使用しないこと。
●高感度な検出器として,He 等のトレースガスを利用した検知方式がある。
発泡液法
冷凍空調機器及び各種配管継手等に直接噴霧(塗布)し,冷媒の漏えいによる発泡有無をチェックすることで漏えい
の有無及び場所を特定する。
特徴
発泡液法は,冷媒の種類に寄らず検知できる。冷媒を使用せず窒素ガス等で検知が可能である。
高粘性発泡液(水溶性の高粘性配合)の場合は,従来の低粘性発泡液に比べ,より高感度の検知が可能であり
泡の持続性も大幅に向上する。
注意事項
1) 漏えい量が微量な場合,吹き付けてすぐには泡が発生しない。
また,時間を置き過ぎると発生した泡が消えてしまう。
2) 水溶性のため,電装部へは噴霧(塗布)しない。
3) 低温では発泡力が弱くなるため,低温タイプを使用する。
4) 漏えい検査後は,清掃(可能であれば水洗い等)を実施する。
5)使用する場所は冷凍空調機器及びそれに付随する各種配管等。た
だし,機内圧は通常0.1MPa 以上必要である。
蛍光剤法
冷凍空調機器内に,冷凍機油ベースの蛍光溶液を注入してシステム内を循環させておき,一旦漏えいが発生すれば
冷凍機油と一緒に蛍光剤も漏えいするため,その蛍光剤をUV ライトでチェックすることで漏えいの有無及び場所
を特定する
特徴
漏えい箇所に蛍光剤が付着するため,長い期間漏えい箇所の状況確認が可能である。
ベースの冷凍機油が冷凍機油種類(鉱油,POE,PVE,PAG,AB)ごとに用意されているため,冷凍空調機器への
影響が少ない。
冷凍機油に注入する方式のため,小型~大型まであらゆる冷凍空調機器に対応可能である。漏れ箇所は,UV ライト
で蛍光発色させて検知するため,容易に漏えいを発見して漏えい箇所のポイントを特定が可能である。
注意事項
1) 使用に際しては,冷凍空調機器メーカの承認が必要であ
る。
2) 蛍光剤が十分循環する必要があるため,注入後最低でも
48 時間運転後に検知作業を実施する。
3) 注入の際,冷媒量もしくは,冷凍機油量に従って,正し
い量を注入する。
4) 注入の際,必ず使用されている冷凍機油を確認し,ベー
スとなる冷凍機油が同じ蛍光剤を注入する。
5) 修理完了後は,必ずクリーナで蛍光剤を洗浄する。
トレースガス法
He,H2 等による漏えい検知方式
加圧法(スニファ法)特徴
●正しくメンテナンスされればほとんどの
漏えい検知に適している。
●フロンを回収する必要がある。
加圧法(スニファ法)注意事項
●トレースガス専用の検知器
が必要です。
●トレースガスをN2 に混合
したものを機器に加圧注入
し,検知器で点検する。
真空法(吹付け法)特徴
●正しくメンテナンスされればほとんどの
漏えい検知に適している。
●フロンを回収する必要がある。
●大型機器に適している。
●電子式や他の方法で検知できない時に使
用する。(高感度)
真空法(吹付け法)注意事項
●機器全体をビニール等で包
みトレースガスを機器外部
より吹きかけると漏えい有
無を検知できる。
●部分的にトレースガスを吹
付けることにより,漏えい
箇所を見つけることができ
る。

よくある漏えいの要因

 

よくある漏れ箇所の原因と対策

漏れ箇所 原因 対策
閉止バルブ

●バルブとスピンドル軸の間のシー
ルが経年劣化と使用により磨耗
●据付け時の加熱しすぎ
●キャップを被せていない
●シート面が滑らかであるか確かめ

●真鍮製の場合は濡れ雑巾等でバル
ブを冷やす
●バルブにはキャップを被せること
(多くの漏れはキャップを被せてい
ないバルブから生じる)
ムシ付きバルブ

●ろう付けの間にバルブコアが損傷

●交換時にコアが正しく締められて
いない
●内部シールの経年劣化
●キャップが被さっていないか又
はOリングシールが無い

●フイッテイングをろう付けする時
はバルブコアを外すこと
●コアを交換する時はバルブボディ
が冷えていることを確かめる
●定期的に交換する
●キャップが被さっていることまた
シールが(良好な状態で)納まって
いること
フレア継手
●広範囲な温度変化による熱膨張・
熱収縮によるフレアナットの緩み。
特に膨張弁の出口の場合
●継手の施工不良
●初期施工からの漏えいが原因
●締め過ぎ,締め不足
●フレアを使用する場合は,フレア
アダプタ(工場で加工したフレア)
をできるだけ使用すること
●フレアを加工しなければならない
場合は,パイプカッタでパイプを切
断し,工具を正しく使用して拡管す

●フレア工具を使用し,適正なパイ
プ長さがフレアブロックから出てい
ることを確認する
●フレアガスケットは再使用しない
●フレアナットを締め過ぎないよう
に,また締め不足にならないように
トルクレンチを用いて,決められた
トルクで締める
フランジ

●継手修理の不良
●ガスケットを交換しなかった
●ボルトの片締め
●不適切なガスケットを使用
●ボルトの締付けのトルク不足
●フランジのガスケットを交換する。
新しいものを入れる前に古いガスケ
ットはすべてとり外し,傷のないこ
とを確認する
●フランジが正しく接続されるまで,
対角の位置が交互に締められるよう
に均一にボルトを締める
●HFC 冷媒においては材質上専用の
ガスケットを使用する
●適正なシール剤を使用する
●トルクレンチを用いてフランジボ
ルトの最終の締付け力を確認する
溶栓

●幅広い温度及び圧力変動は溶融
金属と本体の接着を弱める
●高温になる箇所には,できるだけ
溶栓の使用は避ける
●溶栓は適宜,漏えい点検を行う
安全弁

●圧力を逃がし,圧力が下がった状
態で弁座をセット
●安全弁の弁座を通しての漏れ
●適宜,安全弁出口の漏えい点検を
実施する
●安全弁から漏れている場合は修理
又は交換する
●安全弁にはキャップをしてはなら
ない
シャフトシール

 開放型圧縮機
●一般的な経年磨耗
●シャフトシールからのオイル漏れ
●潤滑不良
●油中に溶解したフロンが漏えいす

●新しいシャフトシールの不適切な
組み込み
●シャフトの芯出しの不良
●ベアリングの損傷
●シャフトシールのオイル漏れを定
期的に観察して,シャフトシールが
摩耗していないか点検する
●圧縮機を停止してシャフトシール
からの漏えいを点検する
●シャフトシールを交換する時は適
正なシャフトシールを使用し,処置
要領に従うこと
●ベアリングの交換
シェルアンドチューブ凝縮器

●管内を循環する水が適切に処理さ
れていない場合は,腐食が生じる
●管板の腐食
●管内の腐食は目に見えないため漏
えい位置を特定するのは難しい
●薬液注入装置など適当な腐食防止
装置が装備されていることを確かめ

●定期的に水室を開放して点検する
●腐食状態の定期検査
渦流探傷検査・内視鏡検査
●定期的なメンテナンスと監視
●管束で漏えいが生じた場合,漏れ
た管のみを交換するだけでなく,他
の管も同様の状態にある可能性が高
いので注意する
空冷凝縮器

●腐食の発生
●空気の流れの中に異物が含まれる
ことによる衝撃損傷
●振動による管束固定部の破損
 ●フィン列にオイルの染み出ている
兆候はないかチェックする
●凝縮器を交換する時,海岸など塩
害環境で使用される場合等,使用環
境に注意して選定すること
●バランスが取れていないファンは
修理か交換する
●常に凝縮器は水平に設置する
圧力スイッチ

●振動により圧力スイッチの継手部
分が外れるか又は圧力スイッチが損
傷する
●圧力スイッチの圧力検知管がこす
れている
●振動か流体の脈動によるスイッチ
ベローズの破損
●圧力スイッチのフレア接続の不良
●圧力スイッチ本体の支持または固
定の仕方の不良
●圧力スイッチの継手部が他の部分
や他の振動面と擦れていないことを
確認する
●圧力スイッチへの振動伝播が最小
となるように圧力スイッチを取り付
ける
●できれば二重ベロースイッチを使
用する
●銅管が使われているところでは圧
力スイッチにフレアアダプタを用い

●圧力スイッチが正しく支持または
固定されていることを確認する
●圧力スイッチの内部を常に漏えい
点検する(運転中の場合は,感電に
注意)
O リング,ガスケット

●高温又は低温にさらされた場合,
損耗,膨潤,硬化,扁平化する
●冷媒を転換(レトロフィット)し
た場合,新オイルに適合せず漏れを
生じる
●形状の変化や柔軟性を点検する
●既存のO リングを再使用しない
●装着する前に冷凍機油をシール面
に塗布する(メーカ標準に従う)
●メーカ標準に従って,装着前に必
要によりシール剤を塗布する
●交換したガスケットがシステムの
オイルと冷媒に適合していることを
確認する

キャピラリチューブ

 

 

 

 

圧力連結部と膨張装置

●不確実な固定なためこすれ等によ
りキャピラリチューブを損傷
●キャピラリチューブ接続部の振動
による過大応力またはろう付け不良
●保護用スパイラルチューブや結束
バンド等で固定する
●振動対策を取る
●キャピラリチューブの交換
Uベンド部
蒸発器と凝縮器

●蒸発器または空冷凝縮器のUベン
ド(曲管)部における化学作用によ
る腐食
●熱交換器のUベンド部分は肉厚が
薄くなっているため,腐食により比
較的短期間に漏えいに至る
●厳しい環境(塩害や酸性雰囲気)
では損傷が加速され漏えいに至る
●雰囲気が厳しい場合の例として,
食品工場などでサラダなどが塩素水
で洗浄されている場合や酢が生産さ
れている場合,また設置場所が海岸
に近い場合などがある
●Uベンドのリーク検査は十分に行
うこと
●蒸発器や凝縮器のU ベンド部から
漏れを生じやすい時は,コーティン
グされているか電気メッキされた熱
交換器など損傷を受けにくい材質を
持ったものと交換する
●化学洗浄を行ったときは,確実に
中和処理を行った上で,条例水質基
準に従って適切に処理する