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真空引き&冷凍機油充てん

銅管及び鋼管配管を組み付け後、以下の手順で配管施工を完成する

3.真空乾燥(真空引き)

気密試験(または加圧漏えい試験)後に、冷媒配管内部の空気(空気中の水分を含む)又は窒素ガスを排除するため、真空ポンプで真空引きを行う。冷媒によるエアパージは冷媒の放出を伴うため、実施してはならない。

3.1 真空ポンプの選定

真空ポンプは、対象とする機器を構成する冷凍サイクルの容積を目安として、作業性、使い勝手等も考慮し、適切なものを選定する。通常の電動のものに加え、小型の家庭用ルームエアコンの配管接続時の真空引き用として二酸化炭素で置換後、これを吸着させることで真空引きをするものや、手動で真空引きをするものもあるが、到達真空度などの問題があるので使用に際してはエアコンメーカに問い合わせること。

電動式真空ポンプの場合。

 

 

 

3.2 真空引きの手順

パッケージの場合

1. 室外ユニットの液側、ガス側の止め弁が全閉であることを確認する
2. 止め弁にゲージマニフォールド、真空ポンプ、真空ゲージを接続する。
3. ゲージマニフォールドのバルブを全開にして真空ポンプを運転する
4. 真空ゲージが0.6kPa(5Torr)以下になったことを確認する
5. 0.6kPa以下になってから1時間以上真空ポンプを連続運転する
6. ゲージマニフォールドのバルブを全閉にする
7. 真空ポンプに接続されているホースをゆるめ(A部分)ポンプを停止する
8. 1時間放置した後ゲージの圧力が上がらないことを確認し真空乾燥を終了する。
圧力が上昇したら、微少漏れか又は配管内に水分が残っているので、漏れ箇所をなくして再度加圧試験を行い、再度真空乾燥を行う。
9. 室外機の液、ガス両方の止め弁を全開にする   

  

3.3 作業時の留意事項

a) 真空引きに必要な機器の接続ならびに真空引き時間、方法等については、対象となる空調機器周囲温度条件等により異なるので、メーカの施工・サービスマニュアルに従って行う。
b) 真空度は6kPa(5Torr)以下にすることとなっているが、ゲージマニフォールドのゲージでは読み取り不可能なので、真空ゲージを取り付けて0.2~0.6(2~5Torr)の真空管理をする。
c) 真空引き途中で何らかの原因で真空ポンプが停止したときや、真空引き後の真空ポンプ停止時に真空ポンプオイルが逆流することがあるので、逆流防止のための真空ポンプアダプタを取り付ける必要がある。

真空度の表示例

気圧 1 0.921 0.132 0.066 0.026 0.007 0.003 0.000
rmnHg (絶対) 760 700 100 50 20 5 2 0
Torr 760 700 100 50 20 5 2 0
kPa (絶対) 101.3 93.3 13.3 6.6 2.6 0.6 0.2 0
kPa (ゲージ) 0.0 -8 -88.0 -94.7 -98.7 -100.7 -101.l -101.3
MPa (ゲージ) 0.0 -0.008 -0.088 -0.0947 -0.0987 -0.1007 -0.1011 -0.1013
mmHg(ゲージ) 0 -60 -660 -710 -740 -755 -758 -760
mmAq(ゲージ) 0.0 -815.7 -8,972.8 -9,652.5 -10,060.4 -10,264.3 -10,305.1 -10,332.30
ミクロンHg 760×103 700×103 100×103 50×103 20×103 5×103 2×103 0

4.冷凍機油充てん

HFC冷媒対応の冷凍機油は従来の鉱物油系冷凍機油と異なり合成油系であり、特性に大きな違いがあるので、冷凍機油充てん作業で注意を怠ると従来以上に冷凍サイクルに障害が発生する恐れがある。

4.1 冷凍機油の特性

各種の冷凍機油の特性を比較した下表で分かるように、合成油、特にエステル油(POE)は鉱油系より水分を吸いやすく、水分が入ると加水分解が進行しやすい。

  POE PAG カーボネート エーテル 鉱油 アルキルベンゼン
加水分解安定性
抗吸湿性

4.1.1 加水分解

エステル油が水分を吸湿すると逆反応を起こし、脂肪酸とアルコールに戻る。加水分解は温度が高いほど反応は早く進行する。
脂肪酸は他の金属塩を生成させ、油に溶けないスラッジを生成させるなど潤滑に有害なものとなる。また、水分と同時に侵入する空気中の酸素により油は酸化して劣化する。

4.1.2 コンタミによる影響

油充てんの不備によりコンタミが混入した油が冷凍サイクルに与える影響を把握し、充てん作業におけるコンタミ混入を防止する必要がある。

コンタミ混入の油が及ぼす冷凍サイクルへの影響

要因 現象 冷凍サイクルへの影響
水の混入 加水分解

スラッジの発生

膨張弁・キャピラリの氷結

膨張弁・キャピラリ詰まり    冷却不良

圧縮機過熱

酸の発生

酸化

油に劣化

モータの絶縁不良    モータ損傷

摺動部の銅メッキ      ロック

摺動部の焼付

空気の混入 酸化
異物の混入 ゴミ・汚れ 膨張弁・キャピラリへの侵入

膨張弁・キャピラリ・ドライヤ詰まり 冷却不良

圧縮機過熱

圧縮機内に異物混入 摺動部の焼付
鉱物油など スラッジの発生

膨張弁・キャピラリ詰まり    冷却不良

圧縮機過熱

油の劣化 摺動部の焼付

冷凍機油充てん作業が及ぼす冷凍サイクルへの影響

冷凍機油の充てん作業要因 冷凍サイクルへの影響
充てん量過剰 圧縮機内に油が多量にたまりインナーサーモの作動や液圧縮な
ど圧縮機の損傷の原因となる
シリンダ部への給油量が多くなり多量の油がサイクル内に回る
ので、凝縮器・冷却器の汚れを起こす
充てん量不足 圧縮機内の摺動部の摩擦・焼付きなどの損傷の原因となる
気中暴露時間が長い 空気中の水分・酸素の油への混入
冷凍サイクルの開放時間が長い 空気中の水分・酸素の油への混入
容器・ホースなどが汚れている 異物・水分混入
異種油充てん 異種油がサイクル内に回り、凝縮器・冷却器の汚れ、オイルサ
クションを起こす
油ポンプによる油充てん ホースの油缶底付きによる残さ物、空気の圧送による異物・水
分・酸素の混入
真空引き後の差圧による
油充てん
ホースの油缶底付きによる残さ物、空気の圧送による異物・水
分・酸素の混入
長時間保管の残油の使用 保管不備による油の酸化・劣化

4.2 冷凍機油の管理

冷凍機油の特性を考慮して、従来以上に油劣化を防止する管理が必要である。特に空気暴露に対する油缶の密閉を徹底して吸湿防止に努めることが重要である。

4.2.1 管理基準

1)保管期間限度

①未使用密閉油缶

必要最小量購入するのが望ましいが、やむをえず長期間保管していた場合は未使用油缶を開封して充てんする場合であっても、色や臭いなどで劣化していないか念のため再確認する。

②開封後の残油缶

開封時空気中の水分の吸湿が考えられるため、数ヶ月経過後使用する場合は、色、臭い、沈殿物の有無など確認し、問題があれば使用しない。

2)気中暴露時間

開封から油充てんまで10分程度以内が理想であるが、吸湿水分量は湿度、温度など周囲の環境条件に大きく左右されるため、可能な限り短時間で充てん完了する。

3)保管周囲温度

開封後の残油保管を徹底するためには、温度の影響による加水分解抑制などを考慮して40℃程度以内とするのが理想である。

4.2.2 管理上の留意事項

①充てん完了後の小分けしたジョッキの底などに残った少量の油は、相当の吸湿が考えられるので油缶に戻さず廃却する。②気密性のあるビニール袋などで密閉するとよい。シール性に欠けると温度変化による呼吸作用のため空気が侵入する。
③風雨、直射日光などが当たる場所、温度差の激しい場所で保管しない。

4.3 冷凍機油充てんの判断

空調機器(冷蔵庫、ルームエアコン、パッケージエアコン)及び全密閉圧縮機単体出荷時は、メーカによりサイクル内循環量を考慮した適正量が充てんされている。また、少量のガス漏れ程度の不具合などでは油は減少しないので、あらためて充てんすることはほとんどないが、以下の状況では充てんが必要になる。適切に保管管理されたものを使用し、細心の注意を払って充てん作業にあたらなければならない。

1)全量交換が必要な場合

①劣化による交換
②圧縮機のオーバーホールによる交換
③圧縮機内の部品損傷による交換
④サイクル内への水侵入による交換

2)追加充てんが必要な場合

①試運転時の油面調整
②油漏れによる補充漏れ量が確認できない場合は、全量交換する
③点検時の油面低下
④サンプリング抽出後の補充

4.4 充てん作業

4.4.1 冷凍機油の種類の確認

必ず機器メーカ指定の冷凍機油を用意する。機器の用途と使用冷媒が同じでも機器メーカによって指定する冷凍機油が異なる場合が多いので要注意。

4.4.2 充てん作業の留意事項

作業全般

①開封後は速やかに充てん作業を開始し、充てん後は速やかにシステム内を封鎖して空気の侵入を防止する。
②作業に関するメーカ指示がないかマニュアルなど注意深く確認し、指示事項を遵守する。
③油充てん口がある場合は充てん口を使用する。ない場合はメーカ指示や冷凍サイクル図で十分確認して、圧縮機や油分離器などの最適な部位を選定して充てん口とする。
④冷凍空調機器の運転を停止してから作業する。
⑤湿度の高い場所での充てんは極力避ける。機械室では換気を実施して湿度を下げてから開始する。
⑥配管工事などで溶接や粉塵のある場所では、ゴミの侵入する恐れがあるので油缶の開封、充てんは避ける。
⑦充てん容器、ホースなどは油種専用品を使用し、併用する場合は完全に洗浄してから使用する。
⑧レトロフィットの場合は、使用する油と同一油でフラッシングして、システム内の残油を排除する。

4.4.3 充てん方式

①吸引方式

真空引き後、油容器からホースなどで吸引充てんする場合は、必ず充てん量より多めの油を準備し、所定量充てん後、油が容器の底に若干残る状態にして、吸湿状態の上澄みの油や空気を吸引しないよう注意する。

②圧送方式

システム開放ができない場合など機内に圧力がかかった状態で充てんする場合は、圧縮機が低圧シェル方式か高圧シェル方式か見極めて、適当な油充てん口から油ポンプでシステム内に空気を入れないよう注意して充てんする。

③注入方式

半密閉などの圧縮機を開放して油充てんする場合は、油専用充てん口や圧縮機上部の開放部から油ジョッキ、ロートなどで、撹拌されないように静かに注ぎ充てんする。